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第26話 先輩が居なくても?
プリンターの音が止まると、部屋に静けさが戻った。
印刷された写真は、ほんとに綺麗で、皆楽しそうで。
「これ、好きですね。……あ、これも。皆めっちゃ楽しそう」
「ふふ。そうだね……でもまあ、これ、オレが撮らなくても撮れる写真かも」
「え? そんなことないですよ」
「だって、楽しそうなのは皆が楽しいからであってさ。宮瀬が仕切ってるから、こういう雰囲気になってるんだと思うし。だから、宮瀬が居れば大丈夫だよ」
そんなセリフに、何と答えていいのか分からなくて、先輩を見つめるけれど。
先輩は、オレとは目を合わせずに、写真を数枚、指で整えながら、ふっと小さく息を吐いた。
先輩が印刷された写真を眺めながら、ぽつりと。
「やっぱり宮瀬って、すごいよな」
「……なんですか?」
「今日だってそうだよね。皆がこんなに楽しそうなの、宮瀬がいたからだと思う。ぬいが可愛いのはもちろんだけど……ちゃんと人をまとめて、空気も作って。オレ、今日の宮瀬、すごかったなーて、普通に思ってるよ」
「そんなこと、ないです」
「あるって。……ほんと、カッコよかったと思うし」
「――」
なんだろ、急に。
オレの前で、先輩はレモンサワーをもう一口。
ちょっと笑ったあと――。
「……あのさ、宮瀬」
「はい」
すぐに返事をしたのだけれど、先輩はしばらく黙った後。
それからふっと真顔になって、ぽつり。
「ごめん、宮瀬――オレ、イベントの当日は、行かなくてもいい、かな……?」
「――え?」
オレは咄嗟に先輩の方を見るのだけれど。
先輩は、パソコンの画面を見つめたまま、淡々と続けた。
「もちろんさ、売り物の撮影とか、マニュアルとか、事前のはちゃんと全部作るから」
「……」
「当日、オレが居なくても、大丈夫だよね? それまでに、頑張っとくから」
オレは、咄嗟に、言葉が出なかった。
理由は……さっきの、先輩の母校だろう。
それは、分かる。
会いたくない奴が、居るってこと、だよな。
もう卒業して、少なくとも、丸一年以上は経つのに、そんなに強い感情で……?
先輩がたまに、オレが居なくても、って言うのと、関係があるんだろぅか。
……分かんないな、もう。
これを聞いていいのかすら、分からない。
分かんないけどでも――。
このまま、先輩が居なくても大丈夫、なんて言葉に、頷くわけにはいかない。
それだけは決まってる。
「……先輩は、ほんとに、それでいいんですか?」
やっと絞り出した声は、少し掠れていた。
ずっと逸らされていた瞳が、ふ、とオレを見つめてきた。
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