77 / 79

第26話 先輩が居なくても?

 プリンターの音が止まると、部屋に静けさが戻った。  印刷された写真は、ほんとに綺麗で、皆楽しそうで。 「これ、好きですね。……あ、これも。皆めっちゃ楽しそう」 「ふふ。そうだね……でもまあ、これ、オレが撮らなくても撮れる写真かも」 「え? そんなことないですよ」 「だって、楽しそうなのは皆が楽しいからであってさ。宮瀬が仕切ってるから、こういう雰囲気になってるんだと思うし。だから、宮瀬が居れば大丈夫だよ」  そんなセリフに、何と答えていいのか分からなくて、先輩を見つめるけれど。  先輩は、オレとは目を合わせずに、写真を数枚、指で整えながら、ふっと小さく息を吐いた。  先輩が印刷された写真を眺めながら、ぽつりと。 「やっぱり宮瀬って、すごいよな」 「……なんですか?」 「今日だってそうだよね。皆がこんなに楽しそうなの、宮瀬がいたからだと思う。ぬいが可愛いのはもちろんだけど……ちゃんと人をまとめて、空気も作って。オレ、今日の宮瀬、すごかったなーて、普通に思ってるよ」 「そんなこと、ないです」 「あるって。……ほんと、カッコよかったと思うし」 「――」  なんだろ、急に。  オレの前で、先輩はレモンサワーをもう一口。  ちょっと笑ったあと――。 「……あのさ、宮瀬」 「はい」  すぐに返事をしたのだけれど、先輩はしばらく黙った後。  それからふっと真顔になって、ぽつり。 「ごめん、宮瀬――オレ、イベントの当日は、行かなくてもいい、かな……?」 「――え?」  オレは咄嗟に先輩の方を見るのだけれど。  先輩は、パソコンの画面を見つめたまま、淡々と続けた。 「もちろんさ、売り物の撮影とか、マニュアルとか、事前のはちゃんと全部作るから」 「……」 「当日、オレが居なくても、大丈夫だよね? それまでに、頑張っとくから」  オレは、咄嗟に、言葉が出なかった。  理由は……さっきの、先輩の母校だろう。  それは、分かる。  会いたくない奴が、居るってこと、だよな。  もう卒業して、少なくとも、丸一年以上は経つのに、そんなに強い感情で……?  先輩がたまに、オレが居なくても、って言うのと、関係があるんだろぅか。  ……分かんないな、もう。  これを聞いていいのかすら、分からない。  分かんないけどでも――。  このまま、先輩が居なくても大丈夫、なんて言葉に、頷くわけにはいかない。  それだけは決まってる。 「……先輩は、ほんとに、それでいいんですか?」  やっと絞り出した声は、少し掠れていた。  ずっと逸らされていた瞳が、ふ、とオレを見つめてきた。

ともだちにシェアしよう!