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第31話 コミュ障の心の中。

     「それで今の先輩に、思うことなんですけど……」 「ん……」  先輩はオレの方を見ずに、頷いてる。 「先輩は、ちゃんと傷ついていいと思います……そいつのこと庇ったりしないで。ほんと嫌なことされたなって、認めちゃってほしいです」 「――」 「愚痴、いくらでも聞きますから。ていうか、オレが言ってもいいですよ」 「……宮瀬が何の愚痴を言うの?」 「……えーと……そんな、人の力で賞取ったって、自分の中でも絶対苦しいし、何してんだって。絶対先輩に謝ればよかったのに。で、先輩に許してもらって、そしたら先輩はきっといい人だから、賞は賞で受け取っておきなよとか言っちゃうんでしょうね、きっと」 「……」 「謝られたら、言いました?」 「……言ったかもね……取り下げるとか大変だし……取り下げたら、今後きっと、そういうの無理になっちゃうし」 「ほらね、先輩、優しすぎなんですよ。そんなやなことされたら、そんなこと、考えてあげなくていいんですよ」  はは、と先輩が苦笑してる。 「でも、オレは、先輩のそういうとこ、すごく好きです」 「――」  きょとん、と。さっきから先輩に何度この顔をさせているのだろうか。  ……ていうか今のはヤバいかもしれない。 「っは、あの……あっあの人として。先輩として、ですよ、あの、決してそういう……」 「分かってるってば。どもりすぎ……」  めちゃくちゃ面白そうに先輩に笑われてしまった。熱くなった顔をパタパタしつつ。 「……だからつまり、とにかくこんなにいい人で優しい人を、自ら切ったんですよ、そいつ。バカですねー、可愛がってもらってたのに」 「――」 「って誰の愚痴だろ……? あ、分かりました、後輩サイドの愚痴ですね。きっと、そう思ってますよ。あんなことして、あんなこと言って、もしかしたらその時、賞とって調子に乗って、先輩の仲良かった人彼女にして、勘違いしてたかもしれませんけど。でも実力でとった訳じゃないし、きっと、嫌な気持ち、残っちゃってますよ。……その賞をとった写真を見るたび。きっと、先輩のこと、思い出して。苦い思い、してる……といいですね」 「……なにそれ」 「いや。もしかしたら自分を守るために、撮ったのは自分だって、思うような奴かもしれませんから、何ともいえないですけど」  先輩は、ん、とうつむいて。首を傾げた。 「……そんな奴じゃ……無かった、かな……」  小さな声で言う先輩に、胸が痛い。 「まだ庇うんですね、先輩。……じゃあ、きっと、そうですよ。間違って賞をとっちゃって、自分を守るためにそうしちゃったけど。多分、その賞はちょっとトラウマですよ。全国大会入賞とか言われるたびに、ちくちく刺されてるような感じですよ」 「――そっちの気持ちは、考えたこと、無かった……」  先輩が俯くけれど、オレはその腕を引いた。 「先輩は考えなくていいです。そっちまで考えないでください」 「――」  オレをびっくりしたみたいに見つめてから、先輩は、ん、と頷いた。ふ、と笑った先輩の腕を、話して、オレは、続けた。 「でもきっと後悔してると思うし、してないなら大馬鹿野郎です。気にしないでください。でもオレだったら……先輩の写真が好きで懐いて、先輩と撮った写真が一番自分の中で良かったから、出したら、賞取っちゃって……みたいな……そんな奴が考えるのは、今はもう、後悔じゃないかなって思いますけど」 「――」 「部活で引退するまで、そいつって、先輩の悪口、言い続けたとかですか?」 「……ううん。その、一回だけ」 「その後、どんな態度だったんですか?」 「完全に避けられてたけど」 「……気まずかったんでしょうね」 「――嫌われてたんだと思ってた」 「違いますね、多分。まあオレの言ってるのは、全部、多分、ですけど。これ、あってなくても、どうでもいいんです。事実は一つで」 「ん?」 「そいつは、好きだった先輩を、自ら無くしたんですよ。バカですね。女子も、バカです……って、人のこと、バカって言っちゃいけないんですけど。敢えて言ってます」 「――」  先輩、しばらく、無言。 「ていうか……宮瀬」 「はい?」  先輩は、苦笑しながら、オレを見つめる。 「めっちゃ喋るじゃん……」 「オレは大体心の中だけでめっちゃしゃべってるんで……今は、大事なとこなので、全部、外に出してます」 「……はは。おもしろ……」  先輩は少しだけ首を傾げて、じいっとオレを見つめてくる。 「……なんか、救われるわ。コミュ障とか言ってないで、全部喋ってよ。いつも」 「……が。がんばり、ます」 「あはは。なんでそこ、どもんの」  けたけた笑ってる先輩。

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