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第37話 朝日の中の撮影会

 顔を洗って、着替えて、ちょっとすっきり。ローテーブルを窓際に少し寄せた。  朝の独特な静けさの中。窓から差し込む、淡い淡い、オレンジの光。オレンジというか、金色にも見えるような。   「……先輩が朝の光がいいって言ったの、分かる気がします」 「ん。でしょ。なんかね、綺麗なんだよ、空気が」  言いながら先輩は、カメラの設定を弄ってる。  綺麗な指先。  ……カメラを撮ってる先輩を、撮りたいくらい。……あ、撮ったな、一枚。  あれまだ、先輩に言えてないな。 「宮瀬、そこに座って」 「はい」 「で、この布の上に手を置いて、このぬい、触ってて」 「はい」 「もうちょっと、手、開いて? ぬいも少し頭が見えるように……なんかふわって、可愛がってあげる感じで……」 「はい……ってこうですか」 「うん。そんな感じ。なんか、こう、作ってる時の感覚で触ってて」 「はい」  先輩は真剣。オレは、もう、言われるがままに動く。  先輩は――カメラと、オレの手元しか見てないので。オレは、先輩を見てしまう。多分今は、絶対バレなそう。  ――真剣。綺麗。  写真、好きなんだなって、分かる。  これから――また写真、楽しんで撮れるようになったらいいなぁ……。  今回のイベントの成功が、それにつながるような気がする。  俄然、やる気になってくる。  自分のために、ただ頑張るっていうのは、オレはちょっと向いてない。  たぶん、そういうのだと、モチベが上がらない。  先輩のためとか。  頑張ってくれる結愛や、手芸部の皆のため。  今回は、ワークショップに来てくれる子が、ぬいをつくるのを好きになってくれたらいいな、とか。  皆が頑張って作ってくれてるぬいを、大事に可愛がってくれたら。それで癒されてくれたらいいなーとか。  なんか、そういうのが。  今回すごく、たくさんあるから。  珍しいくらい、やる気にはなっている。 「宮瀬、もうちょっと、テーブルごとこっちに来て」 「はい」 「そこの綺麗に光が当たってるとこに、手を置いて?」 「ここですか?」  差し出した手の上に、柔らかな光がふわりと重なった。  あ、これか。その中でぬいに触れていると、先輩が、柔らかく微笑んだ。 「そうそう。肌がさ。透明感出て、すごく綺麗――」  先輩の声は、むしろ淡々としているのだけれど。  カメラに触れてる先輩の視線からは、熱を感じるような。  ……手に当たる光を褒めてるだけなのは分かっているんだけど。  まっすぐな瞳が、すごく綺麗で。その瞳に映っているというだけで。  胸の奥が、ドキドキ、する。  カシャ、と何回か、シャッター音。 「ありがと。宮瀬はもういいよー、お疲れ」  そう言われて、ほっと肩から力が抜けると、先輩がクスクス笑う。 「緊張した?」 「はい」 「ふふ。そしたら、今度は、ぬいたち、並べて?」 「あ、はい」 「適当に離したりくっつけたり。可愛いグッズ、並べてみたり。そこは、宮瀬が可愛いと思う風においてくれたらいいよ~」 「は、はい……??」  それはあんまりやったことないな……。  先輩の声かけも聞きながら、あれこれ並べては、撮ってもらう。  しばらく、ぬいたちを並べて、撮影会。  可愛いぬいたちが、まるでモデルみたいに。なんか撮られて喜んでるような気すらしてくる。  ちょっとワクワクした。 「オッケー。もういいよ。また後で、今度は違う光で撮ろ。先、なんか食べよう」  モニターを見ていた先輩は、ニコニコで顔を上げたから。  きっと、うまく撮れたんだろうなと。  嬉しかった。

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