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支配(しはい)
※無理やり、または強引な性描写を含みます。苦手な方はご注意下さい。
口の中が渇き、上手く息が出来ない。遙のその一言は、匠の心臓に氷の刃を突き刺すような衝撃だった。
「き、きのうは、おれが、わるかった……ごめん……」
「口だけなら何とでも言える。本当に心の底から申し訳無いという気持ちがあるか?」
遙の凍てつく声に、匠は首がもげるほどに頷いた。琥珀色の瞳にはうっすらと涙が滲む。
「……そうか。なら今から俺の言う事も聞けるな?それが本心ならな……」
遙はネクタイを緩め、そのまま匠へと近寄る。怯え俯く匠には今、遙がどんな表情をしているか見えない。だが容易に想像出来る。あの青灰色の目が細まり、口角は歪み上がっているだろう。ソファの上で震える自分の身体を抱き締める。
(何だよ……昨日、散々人の身体弄んだろうが……まだ足りないってのかよっ……!!)
勿論声には出せず心の中で悪態をつく。遙はそんな匠に覆い被さり、指でゆっくりと喉をなぞる。
「今日は、少しでも声を漏らすな」
「はっ……?」
匠の喉が詰まり、掠れ震える吐息だけが漏れる。
「聞こえなかったか?……まぁいい。今からお前は声を出す事も、返事をする事も許されない」
遙は腰をぐいっと深く引き寄せると、匠の背筋に鳥肌が走る。空調が効いているはずの室内で汗が髪に滲んでいく。匠は唇を必死に噛みしめ、琥珀色の目から涙が一筋。
「……ほら、よく顔を見せろ。どんな表情をしている」
匠の顎を掴んで強引に上を向かせる遙。その目はもう獣の目。獲物を仕留め、じっくりと捕食する狼のよう。
「可愛いな。……最高だ」
(……や、やだ……もう助けて……)
遙の舌が首筋を這って耳に絡む。
「俺の手でお前の全てを壊したくなる。足りない。何度しても足りない」
「ぅ……っ」
有無を言わさず服を全部剥ぎ取られると遙の長い指はすぐに下へ行き、匠の奥を深く刺す。匠の身体は激しく震え、声が喉の奥でひゅっと詰まる。
「……別に出したければ出しても良い。但し、その時は心から反省していないとみなして、そのたびに追加で一回だ」
遙の吐息が耳に掛かるほど近くで、支配者のように呟いた。
「ふふ……でも、お前は良い子だから俺の言う事が聞けるな?」
更に速度が増し、強く、執拗に責める遙の指。匠の目は涙で濡れ、視界が滲む。
「やっ……いやぁっ……」
「……もう声を漏らすとはな。やはり口だけか、それにしても早過ぎる」
「っ……うっ……ひっ……」
遙は泣きじゃくる匠を見て満足そうに喉を鳴らす。
「残念だが、約束だからな……」
「や、やだっ……!」
遙の声は急に甘く、先程までの冷たさは感じない。しかし指先の動きは容赦無く奥を責める。匠の啜り泣く声に混じる水音。羞恥が煽られ、どうしても抗えない快楽に脳が麻痺していく。遙はそんな匠を上から見下ろし、ゆっくりと目を細めた。
「ふふ……」
遙の指は引き抜かれ、すぐに遙の熱が匠を突き破る。ぐい、と腰を押し込み、深く繋がると愉悦に浸る遙。
「しかし俺にとっては都合が良い……」
「いや……やだ……っ」
遙の唇は耳を甘く噛み、熱い吐息が匠の鼓膜を打つ。
「今夜も眠れないかも知れないな……」
「っ……あっ……」
遙から与えられる刺激全てに、身体が応えるように反応してしまう。匠は情けなさから目から大量の涙を流すが、目の前の遙を煽るだけな事実には気づかない。
「……懺悔しろ。お前は俺のものだ」
「んっ……あ……あっ!」
遙の腰の動きが早まり、深く抉るたびに匠の脚が大きく跳ねる。
「……あぁっ……いやっ!」
「自分が誰のものか、身体で教えてやる……何度でも」
更に一段階、速度と圧が増す。匠の喉は完全に抑え切れなくなり、快楽の波に飲み込まれる。
「っ……あ、あああっ……!」
「……本当に悪い子だな、匠は」
遙の低い囁きが匠の耳の奥に届くと、キュッと締まる結合部。
「や、やあっ……ああ……っ」
「……お前、俺を寝かせない気か?」
「あっ……ん、やっ……あっ……!」
「そんな姿、俺以外に絶対に見せるなよ……死人が出るからな……」
匠は崩れ、喘ぎ、泣き、甘く濡れる音が空間を満たす。
(もうやめろ……やめてくれ!)
遙は何度も匠の喉から声を引きずり出し、快楽の沼へ突き落としていくように止める事無く動き続けた。全身が汗に濡れ、遙の肩に指を食い込ませる匠。しかし力が上手く入らないのか、滑る指先。
「……や、やだっ……もう……っ……!」
「次は、声を出した罰だ。今から俺の許可無しに勝手に射精する事は許さない」
遙は匠の顎を掴んで顔を上げさせると、その瞳を捉えたまま低く言い放つ。その言葉は匠にとって今までの行為はただの前座に過ぎなかったと知る。
「……っ……あ、ああっ……」
「……我慢しろ、それとも……まだ全然し足りないか?」
「や……もうやだぁ……」
速度を上げ、深さを変えると匠の全身が更に震える。
「……俺の許可が出るまでは絶対にダメだ。更にセックスの回数が増えるだけだぞ」
「む、むり……っ……あぁっ!!」
遙の手が匠の震える太ももを掴み、押さえつける。
「っ……ひっ……んんっ……あっ!」
匠の喉の奥から絞り出される声、痙攣する腰、震える足先。追撃の如く遙の唇は首筋を這い、甘く噛んで吸っては痕を残す。支配で押し潰すように匠の白い首に赤い痕が増えていく。遂に匠の背中が反り、痙攣し、喉が詰まるような声が上がる。
「っあ……あぁあっ……!!」
「……ダメだ、と言ったのに。やはり反省していないようだ。今夜は終わらないな……」
遙の声は低く、押し殺した怒気を含みながら、まるで命令のように匠の耳へと落とす。
(くそ……もう……無理だって……)
匠の声が絶え間なく官能的に部屋に響く。瞳からはとめどなく溢れる涙。
「……やだ……もう……っ……」
遙は匠の顎を掴み静かに微笑むが、青灰色の瞳は既に理性を失っている。
「……どうした」
「……ゆるして……」
「ふふ……」
遙の支配の笑みが深くなる。その指は脇腹をゆっくりとなぞり、太ももを押し広げる。
「い、いや……だ……」
「許しが欲しいか」
「……あっ……もう、ゆるして……」
遙の手が匠の震える腰を押さえ甘く、しかし強く掴む。
「……ダメだ」
「ひあっ……!」
「……声は漏らす、勝手に絶頂する……。それで、どうやって許せと?」
「っ……や、やめっ……もう……!」
遙の唇が耳朶に触れ、濡れた吐息が絡む。
「……許す訳が無いだろう」
「うあっ……」
「……お前の全部が壊れるまで終わらない」
匠の脚が痙攣し、喉が詰まる声。
「あっ……ああっ……!」
「しかしその必死な所がまた……そそられる。では、もっと懇願しろ。場合によっては検討してやる」
(……嫌だ、怖い……でも、もう声にならないっ)
涙で濡れた頬が、震える吐息で染まっていく。遙の理性はとうに無くなり、ただ自分の欲求を満たす為だけの行為となっていた。甘く狂った低音の囁きと共に、何度も何度も続く情事。匠を許さず、徹底的に追い詰めていくその姿は狂気であり、性欲の権化そのものだった。
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