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#Fourteen

 あたたかなこの体温が愛おしい。差し伸べられたこの腕を離したくないと、いい年した大の大人が幼子のように駄々をこねてしまいそうになる。  だから紅緒は戒めるようにして自ら胸を痛める根源ともなる彼女の名を口にした。  彼に甘えてはいけない。十年前に身を固めたあの時から、もう自分が知っているティボールトではないのだ。  紅緒は自分に言い聞かせ、目の前にいる彼を遮断するために強く目をつむる。  分厚い胸板を押して、愛おしい体温から離れようと試みる。 「ぼくは仕事があります。邪魔をなさらないでください。伯爵」  紅緒はティボールトを突き放すような口調で告げた。  ハミルトン家の主人が何を言っても一向に首を縦に振らず、片意地を張っている姿に苛立ちを覚えたのだろう彼は、声を張り上げた。

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