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#Nineteen
いい大人がいつまでもぐずぐずと泣いているなんてみっともない。どうにかして涙を引っ込めようとするのに、しかし三十年という長い恋心を抑える術はない。
紅緒の傷つきすぎた心は悲鳴を上げ、限界を越えてしまった。
紅緒はたくましい胸板に顔を埋め、泣き崩れる。
すると今まで黙っていたティボールトは、静かに口を開いた。
「……紅緒、ぼくは君を愛している。君への恋心を理解してからこの三十年間、ずっとだ」
彼が口にしたそれは嘘だと紅緒は思った。
「ふざけないでください!」
(ティボールトがこんな、もやしみたいなぼくに恋をしていただって?)
いったいどの口がそれを言うのか。
美しい女性と結婚し、身を固め、自分に見向きもしなかったのは彼だ。
首を振る紅緒を抱き締める彼の腕の力がずっと強くなる。
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