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#Twenty

 彼の言葉を真に受けてはならない。そう思うのに、ティボールトの甘い言葉を鵜呑みにしたい自分がいる。  ……悔しい。  どうやっても自分はティボールトの思うがままだ。  それだけ、紅緒は彼に惚れているのだ。  紅緒はいっそう唇を噛みしめた。俯いたきり、何も話さない。それをいいことに、彼は紅緒を横抱きにした。  紅緒の身体が宙に浮く。  突然消え失せた足場に紅緒は短い悲鳴を上げると、咄嗟に腕を伸ばし、彼にしがみつく。  何事かと不安になる紅緒を尻目に、ティボールトは無言のまま悠然と屋敷に向かって歩いた。

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