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#Eighteen
紅緒は、三十年間もの長い間、抱いている恋心を捨て去ることができない諦めの悪い自分への苛立ち。それから身を焦がすような恋心を抱いている自分に見向きもしないティボールへの憤り。
それらのやるせない感情がせり上がり、やがてそれは涙になって紅緒の視界を揺らした。
彼はけっして振り向かない。
ティボールトの傍にいたい一身で恋心を打ち明けず、親友という立場を選んだのは自分だ。
臆病な自分が招いた結果だと自分を戒め、涙すまいと決意した薄い唇からは嗚咽が吐き出される。
吐き出される嗚咽の隙間をくぐって、風に揺れるいろは楓がさらさらと寂しそうに鳴っている。まるで自分の気持ちを代弁してくれているようだと、紅緒は涙しながら思った。
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