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#Twenty Two
その姿はまるで愛を告げる騎士のようだ。彼はどんなに年齢を重ねようとも変わらない。――いや、年齢を重ねたからこそなのかもしれない。雄々しい中にも憂いを含んだ男の色香を感じる。
蒼の目は戸惑いを隠せない紅緒を射貫いていた。
揺るぎないその目はいつだって紅緒の胸を焦がし、虜にする。
紅緒の拘束はすでに解かれている。それでも動けないのは、偏に、ティボールトに心を奪われているからだ。
二人は互いに見つめ合う。しばらくの沈黙の後、彼は薄い唇をゆっくりと開いた。
「聞いてくれ、紅緒。君がいうようにぼくはたしかに彼女を愛していた」
そら見たことか。
彼が話したかったのはやはり妻への愛だった。
そこに紅緒に対する気持ちはない。
彼は知っているのだ。紅緒がティボールトへの身を焦がす想いの何もかもを――。
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