4 / 15

04 ルーティン③ いっしょにねんね〜お星様がみてる〜

食後、ふたりはそっと寝室へ向かった。 寝室の扉をゆっくり開けると、部屋の中央には木のぬくもりを感じる大きなベビーサークルが鎮座していた。 中にはふかふかの布団。愛らしいぬいぐるみたちが、ふたりの到着を今か今かと待っているように並んでいる。 明かりを消すと、天井にはやさしい星の光が浮かび上がった。 おもちゃのプラネタリウムが静かに回り始め、青白い光とオルゴールの音色が、寝室をそっと包み込んでいく。 ふたりは肩を寄せながら、そっと布団にくるまった。 小さな星空を見上げながら、椋がやわらかく声をかける。 「レン、今日はね、これを読もうと思って」 手に取ったのは、何度も読み返してきたお気に入りの絵本。 くたびれた表紙が、ふたりの歴史をそっと物語っていた。 「むかし、むかし。あるところに――」 ページをめくる音と椋の穏やかな声が、星の光に溶けていく。 レンはその声に導かれるように、ゆっくりとまぶたを閉じた。 くま耳パジャマのまま、枕に頬を寄せて、すうすうと寝息を立てる。 椋はそっと本を閉じ、レンの寝顔に目を細めてつぶやいた。 「……よかった。顔色、戻ってきたね」 俳優・朝比奈レンが限界を迎えたときの“おやすみルーティン”。 物語の終わりとともに、ようやく椋の一日も一区切りつく。 椋は洗面所で自分の髪を乾かし、それからキッチンへ。 使った食器やフライパンをひとつひとつ丁寧に洗い、布巾で静かに水気を拭っていく。 ――傍から見れば、きっと“普通”ではない。 けれど、椋にとってはそれが幸せだった。 レンが羽を休められる場所であること――それが、なによりも嬉しくて、大切なことだった。 すべてを終えて寝室に戻ると、ベビーサークルの中で、レンが小さく丸くなって眠っていた。 椋はそっと隣に入り込み、その髪にやさしくキスを落とす。 「……おやすみ。僕の、かわいいレン」 耳元でささやいた瞬間、まつげがかすかに揺れた気がして―― 椋はそっと微笑んだ。 星が静かに巡る夜。 ふたりは寄り添いながら、穏やかな夢に沈んでいった。

ともだちにシェアしよう!