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幕間 ② 叔父
ある週末。長めの連休があり、遠出をしようと言って、叔父は碧を連れ出した。ほんの少し、わくわくしていた。たとえ叔父と二人でも、デパートで買い物をしたり、レストランで食事をしたり、そういうことは楽しいに決まっているのだから。
しかし、淡い期待は当然のごとく裏切られる。連れてこられたのは、昼間だというのにどことなく暗く、薄汚い、狭い路地。そこにある、雑居ビルのようなホテル。「まだ昼なのに、もうホテルに泊まるの?」という疑問を口にすることはなく、薄暗いホテルの一室に連れ込まれた。
「アオイくん! 待ってたよぉ~!」
そこにいたのは、男数人。叔父と同世代くらいから、還暦過ぎくらいの年寄りまで。何人もの男が、碧を待っていた。「どういうこと?」と疑問を整理する時間もなく、ベッドへ放り投げられた。黄ばんだシーツに、広いベッド。数人分の体重が乗り、マットレスが軋む。
「や、やだ……おじさんっ……!」
つい、助けを求めてしまった。他に縋れる相手などいないのだ。だが、どうせ無駄だと分かっていた。叔父は冷たく言い放つ。
「みんな、碧に会いたくて、ここで待っていてくれたんだぞ。今日一日、たっぷり愛してくれるんだ。もっと嬉しそうにしたらどうだ」
目の前が真っ暗になる。ほんの少しでも期待した自分が愚かだった。結局、この体は、男の欲望にとって都合のいい、肉人形に過ぎないのだ。
「じゃあ、始めちゃっていいのかな? よろしくね~、アオイくん」
「っ、や……」
「怖い? 大丈夫大丈夫。痛くしないからね~」
と言いつつ、強い力で押さえ込まれる。男との行為には、年齢のわりには慣れている碧だったが、複数を相手にするのは初めてで、しかも、自分より数倍は大きい男たちに囲まれて、力ずくで押さえ込まれて、平気でいられるはずがない。
それからは、終わりの見えない地獄だった。ぶるぶる動く変な玩具を突っ込まれ、性器や乳首を捏ね回され、代わる代わる喉を犯された。
吐き出される精液を、いくら飲み込んでも、終わらない。腹が苦しくなって吐いてしまうと、首輪に繋いだ鎖を引っ張られ、首が絞められる。尻に入れられた玩具が激しく振動して、尻の中をめちゃくちゃに掻き回すので、何も出ない性器を震わせ達した。
「ははっ。こいつ、まだ射精できないんだ。オスイキより先に、メスイキ覚えちゃったねぇ。とんだ淫乱だ」
「や…だぁ、もっ……ゆるしてぇ……」
「許す? わけないよねぇ。むしろ、ここからっしょ!」
「あう゛っっ!!」
ドスン、という衝撃が、脳天まで突き抜けた。ぶるぶる震えるだけの玩具とは違う、生身の肉塊。まさに凶器という他ない。抜き身のナイフで内臓をズタズタに切り裂かれるような、そんな感覚。
尻を犯されながら、同時に口にも咥えさせられ、両手にもまた、薄汚い男の欲望を握らされる。どこを向いても、全員の目が爛々と輝いていた。碧を食い殺してやろうという目。どうやって食い殺してやろうかと考えている、そういう目。
「やだっ、やだぁ! もうやっ、ぬいてぇっ!」
「なに言ってんの。アオイくんのお尻は悦んでおじさんの食べてるよ? ケツ穴ヒクヒクさせやがって、これがホントにガキアナルかよ」
「ちんちんもぷるぷるしちゃってるし。おらっ、これがいいんだろ? 好きなだけイキやがれ、このガキチンポが」
「やだっ! やだあ゛! やぁあああ゛っっ!!」
無理やり暴かれて、痛くて、怖くて、気持ち悪いはずなのに、無残にも作り替えらえた体は、勝手に快楽を拾い上げる。苦痛と恐怖と屈辱の間に、僅かに紛れ込む快楽を、器用に見つけて拾い上げる。幼い体が快楽に打ち震える姿ほど、男を悦ばせる材料もないというのに。
「こいつ、精子は出ねぇくせに潮吹きやがった。ド淫乱すぎんだろ」
「口では嫌がってるくせに、ケツも喉も締めやがる。おらっ、乳首つねられて感じてんじゃねぇぞ、腐れビッチが!」
「あう゛っ、あ゛…っ、ごめ、なさ……ごめんなさいぃ……」
「ごめんなさいじゃなくて~、気持ちよくてイッちゃうう~だろ! もっと楽しませてくんねぇと!」
やっと抜けていったと思ったのに、またも肉塊をねじ込まれる。必死に身を捩ろうとも、芋虫が地べたを這うような惨めさ。男たちの汚い手や、唇や、無慈悲に震える無機質な玩具や、そんなものに穢され、犯された体は、もはや碧の言うことなど聞きはしないのだった。
「ゆるして、ゆるして……ぬいてよぉっ!」
「でもさ~、アオイくんの方からお股開いて、おじさんのチンポほしいよぉ~ってしてるんじゃないの?」
「して、にゃいぃっ! そんなのっ、ちがうぅ!」
「でも、腰カクカクしちゃってるし、お尻の穴もヒクヒクして、すンごい吸い付いてくるよぉ?」
一気に引き抜かれると、排泄感にも似た妙な感覚が駆け抜けて、庇うように腰が反る。それから、一気に奥へ突き入れられると、肚の奥が燃えるように熱くなり、熱を発散したいがために、腰が跳ねる。
「あう゛ぅ…っ! やっ、や゛あっ! いやっ、いや゛っっ!」
「なにがヤなんだよ? 包茎チンポが潮吹いてんぞ」
「あ゛、あぁ゛……っ! ごぇ、なしゃ……ごぇんなしゃいぃ! も、ゆぅしてぇ……っ」
「ん~、どうしよっかな~……なんつってな!」
「ひぐ…っあ゛、あぁあ゛っっ!!」
終わらない責め苦。叔父一人を相手にする方がよっぽど楽。代わる代わる男を受け入れ、腹が膨れるまで精液を飲まされ、注ぎ込まれて、それでもまだ終わらない。
休憩と称して、玩具を突っ込まれたまま放置され、男の体力が回復したら、再び肉棒をねじ込まれる。相手が複数いるおかげで、常に誰かの肉棒を咥えさせられ、尻の中を蹂躙され、精液を注がれ、掻き混ぜられて、もはや誰に何をされているのか、分からなくなるほどだった。
やっと解放された頃には、全身がガクガク震えてしまって、特に下半身には力が入らず、男を受け入れる体勢のまま筋肉が固まってしまったように動かず、自力で起き上がることもできない有様だった。ひどく汚れたシーツの上へ身を横たえ、ほとんど虫の息である。
叔父はソファに腰掛けて、手にした札束を嬉しそうに数えた。さっきの男たちが叔父に支払った紙幣だ。自分は叔父に売られたのだと、この時分かった。
一万円札が何枚も。叔父は、何度も繰り返し数えては、にんまりとほくそ笑んだ。この体は、商品に過ぎないのだ。碧にとって、ではない。叔父にとっての。体のいいペットどころか、人形であり、商品であり、いくら叩いても壊れない玩具であり、ガラクタであり……
ぎし、とベッドが軋んだ。叔父が碧に覆い被さる。目元に暗い影が落ち、碧は小さく身動ぎした。
「もぉ、や……むり……」
「お前が無理でも、こっちはこれからが本番なんだよ」
ベッドの上をずりずりと這いずって逃げようとしても、難なく捕まって押さえ込まれる。数多の男を受け入れ、欲望を飲まされた穴を、武骨な指で押し広げられる。どろりと溢れた精液を塗り付けるようにして、いともあっさりと、肉棒をねじ込まれた。
「あ゛…ああ゛……やだ、ぁ゛……」
「イヤなもんか。こんなに締め付けて。はしたない穴だな」
「んぐ、う゛ぅ……やだっ、やっ……」
ぎしっ、ぎしっ、とリズミカルにベッドが沈む。まるで殴りつけるように、勢いよく腰を打ち付けられて、互いの肉と骨のぶつかり合う音が響く。体重をかけて押し潰されて、呻き声にも似たくぐもった悲鳴が、喉から漏れる。
「ふんっ、ははっ、お前なんかな、どうせ……こんなことくらいでしか、役に立たないんだから……最低限、役に立ってもらわないとな」
罵倒の声が上の空に響く。バチン!と頬に火花が弾け、痺れる痛みに気を取られつつ、碧は目の焦点を合わせた。叔父が、唾を飛ばして怒鳴り散らす。
「聞いてるのか!? お前はただの肉便器なんだよ! お前の母ちゃんと同じ! 姉貴とおんなじ! お前なんかなぁ、ただの男好きの、尻軽の、淫売のっ……肉便器としてしか、価値がないんだからなっ……!」
どくどくと脈打って、汚いものが流し込まれる。肚の奥でとぐろを巻いて、ずっとどこにも行けないままで、碧を犯し続けるのだ。どろどろとした気味の悪い感覚に、碧が思わず眉を顰めると、またバシバシと頬を張られた。
「明日はまた別のお客さんにかわいがってもらうからな。もっと客を楽しませる努力をしろよ」
「やっ、やっ……も、むりです……」
「無理なわけがあるか、淫売のくせに。犯されて悦んでるんだろう? みんなも褒めてくれたじゃないか。尻穴ヒクつかせて、善がってるって」
「ちが…うっ、ちがうぅ……!」
「違わないだろう。ほら、ご褒美だ。くれてやる」
「や゛っ…あ゛、あぁあ゛っっ……!!」
叔父が満足するまで、地獄の責め苦は続いた。最後には、碧は失神と同時に失禁した。
その週末は散々な目に遭い、帰宅してから体調を崩して熱を出し、しばらく学校を休む羽目になった。
こんなことが、一度や二度ではなく、何度も繰り返された。何度も、何度も、何度も何度も。今となっては、数え上げることもできない。
時折、犯されている姿をビデオに撮られ、変態客共を集めて上映会が行われた。わざわざ照明を落とし、映画館のように暗くして、大画面に映る己の痴態を見せられながら、犯された。「やだやだ! 撮らないで!」と泣き叫ぶ悲鳴を聞かされながら、画面に映る自分と同様、ぐちゃぐちゃに犯された。
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