16 / 30
第二部 6章 もう、離れないで
「陽汰くん、久しぶりね。晴斗なら部屋にいるわよ」
「お久しぶりです。突然すみません、おじゃまします」
陽汰は何度も訪れたことのある晴斗の家を訪ねた。二階にある晴斗の部屋の前に立ち、ドキドキと鼓動が早まるのを感じながら小さく扉をノックする。
「晴斗、俺だけど…入って良い?」
「うん」
静かに扉を開け、中に足を踏み入れると晴斗はベッドの上に腰かけていた。一度深呼吸をしてから彼の前に立ち、しっかりと彼の目を見つめる。
「さっきは、ごめん…心配してくれたのにあんなこと言って……それと、晴斗に嘘…ついてた…」
「嘘?」
「うん…お前の発情期のとき…俺、妊娠しないって言ったけど、本当は5%は可能性があったんだ…お前にそのまま言ったら一人でどうにかするって言うと思って嘘ついた…ごめん」
「そっか…それで、昨日は何があったの?」
「……この前…奇跡起こるかもって言ってくれたから…再検査しに行ったら…5%から1%に下がってた……それで、自分でもどうして良いのかわからなくなって…」
昨日、家でグラスを割ってしまってからの記憶は曖昧だった。
割ってしまったものを片付けなければいけない、夕飯を作らなければいけない、いつも通りにしなければいけない。頭の中ではそう思っていたのに、気付けば何もできないまま家を飛び出していた。
「お前にたくさん迷惑かけた…本当に…ごめん…」
「陽汰、こっち来て」
話していくうちに下がっていた視線を上げると晴斗は両腕を広げていた。それは陽汰にその場所に来るようにと言っているようで、陽汰は素直に彼の腕の中にぽすんと収まる。
彼の温かな身体と落ち着く香りが陽汰を包み込み、とくとくと鳴る心臓の音が張り詰めていた心を溶かしていく。
「教えてくれてありがとう。それと、一人で抱え込ませてごめん。俺ももっとしっかりした人間になるから、これからは悩んだりした時はちゃんと言ってほしい」
彼の優しい言葉にじわりと涙が浮かびそうになり、陽汰は晴斗の服をきゅっと掴みながら小さく頷いた。
「うん…ありがとう」
肩に埋めていた顔を上げ、晴斗の瞳をじっと見つめた。そして、少し迷いながらも彼の唇へちゅっと触れるだけの口付けを送る。
瞼を開ければ晴斗は陽汰を安心させるように微笑みを浮かべ、今度は晴斗のほうから唇を重ね合わせた。
離れていた間の寂しさを埋め合うように交わされた口付けは、少し触れ合うだけでは全然足りなかった。
もっと深い交わりを求めるように陽汰が唇を開けると晴斗はその口内へと舌を侵入させ、少し強い力で舌を吸い上げてくる。
「んぅっ…ちゅっ…は、ぁっ…はるっ…んっ」
言葉を紡ぐ暇も与えてもらえず、彼は歯列や口蓋を舌先でなぞった。熱い舌や絡み合う唾液によって全身には甘い痺れが走り、唇の隙間から漏れる互いの吐息も荒くなっていく。
二人の身体は隙間もないほどにぴたりと重なり合っていたが、陽汰はそれでも足りないというように晴斗にぎゅっと抱きついた。すると、背中に回されていた晴斗の手が陽汰のTシャツの中へと入り込み、陽汰の感じやすい場所でもある尾骨を撫で、更に下へと入り込んでくる。
そのまま快感に流されそうになったが、薄く瞼を開けた瞬間、瞳に映った光景にここがいつもの家ではなく、晴斗の実家であることを思い出した。
陽汰は慌てて唇を離し、乱れた呼吸のまま途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「んっ…ぁっ…これ以上は、だめ…お前のお母さん、いるから…」
そう言いながらも晴斗の瞳に映る陽汰は頬を上気させながら瞳を潤ませ、もっと欲しいと訴えているようにしか見えない。そして、それを強調するように太腿には硬くなったモノが当たっており、無意識なのかもしれないが、刺激を求めるように腰も僅かに動いている。
晴斗は腰に回していた手を陽汰の頬へと当て、ほんのりと赤くなったその場所を優しく撫でた。
「本当は欲しいんでしょ?」
「でも…」
「大丈夫、声我慢すれば気付かれないから」
膝の上に乗っていた陽汰の身体を抱き上げ、そっとベッドの上へとその身を横たえさせる。
あんなことを言いながらも陽汰は抵抗する素振りを見せず、自分の上に跨る晴斗のことを見つめた。瞳の潤みは増し、薄く開けた唇からは赤い舌がちらりと覗いて晴斗のことを誘っているように見える。
「陽汰、良い?」
「……」
晴斗の母親が家にいるのだから我慢しなければいけない。心の中ではそう思っていたものの、身体はすでに晴斗の熱を欲していた。それを表すように、前が硬くなるだけでなく、後孔がじわりと湿り気を帯びていくのを感じる。
晴斗に抱かれたい。身も心も晴斗で埋めつくしてほしい。
そんな抗いきれない本能の前では理性なんて脆いものだった。
ごくりと息を飲み込み、少し視線を下げながらも陽汰は欲望に勝てずに小さく頷いていた。
「…ぅ、ん…っ」
「ん、抱かせて、陽汰」
ちゅっと軽くキスをしてから晴斗は陽汰のズボンと下着をゆっくりとずらし始めた。勃ち上がった陰茎からは透明の液体が溢れて下着を濡らしており、それと同様に後孔から溢れた愛液も下着に染みを作っている。
淡い色をした陰茎を指先でそっとなぞると陽汰の身体はピクッと敏感に跳ね上がり、彼は声が漏れないようにきゅっと唇を引き結んだ。
「指、入れて平気?」
「んっ…」
こくこくと頷き、陽汰は自ら脚を開いて晴斗に後孔を晒した。そこはひくひくと収縮しながら透明な液体を溢れさせ、晴斗が指先で軽く触れると早く欲しいと言わんばかりに吸い付いてくる。
二本の指を揃えてゆっくりと挿入していくと、熱い内壁はその指にきゅうきゅうと絡みついた。
「陽汰のここ、もう準備できてるみたいだね。そんなに欲しかった?」
「ッ…!」
欲しくなかった、と言ったらそれは嘘だ。
昨日、混乱したまま実家に帰り、一人で部屋に籠っている時はまるで番を失ってしまったかのような虚無感と孤独感に襲われていた。
検査結果を見て精神的に限界に達し、その上、番である晴斗も傍にいないという状況は陽汰の心も身体も追い詰めていったのだ。
そんな中から救い出され、番である晴斗を欲してしまうのは当然。そして、すっかり晴斗に抱かれる快感を覚え込まされた身体は、すぐにでも彼を受け入れようと自然と愛液を溢れさせていた。
潤んだ瞳で晴斗のことを見つめると、彼は軽く笑ったあと陽汰の額に口付けを落とした。
「もう、欲しい?」
「…んっ…ほ、しぃ…」
「うん、わかった。激しくするとバレちゃうから、後ろからゆっくりするね」
晴斗の指が後孔から引き抜かれると、愛液がツーっと伸び、それは陽汰の内腿に付着した。
ぬるっとした感触が羞恥心を煽り、陽汰はそれを隠すようにころんと横向きに転がる。
直ぐにでも挿入するのかと思ったが、晴斗は引き出しをがさごそと漁り、いつも使っているコンドームを取り出した。
慣れた手つきで袋を破る彼の姿をぼんやりと見つめていると、つい思ったことがそのまま口から出てしまった。
「…ゴム、するの…?」
「中に出して欲しかった?」
「え、ぁ、ちがっ…そういう意味じゃ」
「ふふっ、陽汰がそう言ってくれるのは嬉しいけど、家に帰る時に漏れてきたら大変でしょ?俺ので陽汰のパンツぐちょぐちょになっちゃうよ?」
晴斗の言葉に、陽汰はこのあと実家に帰らなければいけなかったことをハッと思い出す。
陽汰と晴斗の実家はそこまで離れているわけではないが、それでも歩いているうちに中に出した精液が零れてきてしまう可能性は十分にある。それに、家に帰ったらきっとすぐに夕飯の時間になるだろう。
……そんな状態で両親と普通に食事なんてできるわけがない。
「やっぱり…して…」
「うん、もちろん」
晴斗がズボンを少し下げて陰茎を取り出すと、そこはすでに十分な硬さを持ち、赤黒い血管を浮き上がらせている。
コンドームを付けると晴斗はすぐさま陽汰のことを背後からぎゅっと抱き締めた。晴斗の呼吸音が耳のすぐ近くから聞こえ、彼のドクドクという心臓の音も伝わってくる。
「挿入れるよ、陽汰…」
「ぅ、んっ…ぁっ…」
ぐちゅっと濡れた音がしたのと同時に晴斗の長大な陰茎が陽汰の濡れた後孔に侵入してきた。
音を極力立てないようにするためのゆっくりとした挿入は、いつもよりも彼の陰茎が中に入ってくる感覚を強くさせた。
くちゅっ、ぬちゅっと淫猥な音が漏れる度に陽汰の胸の鼓動は早まっていき、締め付けも無意識のうちに強くなってしまう。
「陽汰っ…今日、いつもよりも締め付けがすごい…スリルがあったほうが興奮するの?」
「ん、ぁっ…ちがっ…ひ、ぅっ!」
ぐりっと彼の陰茎が陽汰の敏感な部分を押し上げた。いきなりのことに思わず甲高い声が上がってしまい、慌てて両手で口を塞ぐ。
はぁはぁと手の下で荒い呼吸を繰り返しながらなんとか快感を逃そうとしたが、晴斗は意地の悪いことにその場所を何度も突き上げてきた。
「ゃ…っ…はるっ…とっ…こえ、でちゃっ…ん、ぁっ…」
「母さんにバレないように、我慢して」
そう言いながらも晴斗は腰の動きを止めてはくれず、ますます挿入を深めていく。そして、最奥まで彼の陰茎で埋め尽くされ、陽汰は口を手で押さえながら腕の中でビクビクと震えた。
「は、っ…ぁ…おくっ、いっぱい…んっ…」
「やっぱりいつもより感じてるでしょ?すごい、びしょびしょだよ」
「ゃ、ぁっ…そんなことっ…」
小さく首を横に振ったものの、いつもよりも感度が上がっているのは間違いなかった。
動きは早くないはずなのに結合部から漏れる音がやけに大きく聞こえ、声を我慢しなければいけないと思えば思うほどに呼吸は荒くなってしまう。
生理的な涙が視界を歪める中、晴斗の手が陽汰のシャツを捲り上げた。彼の陰茎が入って僅かに膨らんだお腹を撫で、胸のほうへと上がっていくその手は、ピンっと立ち上がった薄紅色をした突起へと触れた。
「ふ、ぁっ…ゃ、ぁっ…そこっ…だ、めっ…」
「ここ、好きでしょ?」
「ひ、ぁっ…!」
きゅっと強めに摘まみ上げられ、短い喘ぎ声と共に反射的に彼の陰茎を締め付けてしまう。
すっかり敏感に仕立て上げられてしまった乳首を爪先でカリカリと掻かれ、引っ張られ、陽汰の瞳に浮かぶ涙の量はますます増していく。
そして、乳首を弄りながら晴斗はゆっくりと抽挿をし始めた。彼の脈打つ陰茎が陽汰の内部を擦り、ぐちゅっぐちゅっと結合部から二人の交わりを表す音を漏らしていく。
「陽汰、気持ち良い?」
「ぁっ…んっ…んっ…だ、めっ…ゃ、ぁっ…」
「ここは?」
「んぁっ…ゃっ…こえ、でちゃっ…ふ、ぁっ…!」
生殖腔をぐっと押し上げられ、瞳に溜まっていた涙がぼろっと零れ落ちた。
強すぎる刺激によって頭の中は霧がかかったように白くなり、身体はぴくぴくとした細かな痙攣が止まらなくなってしまう。
「イきそう?」
「んっ…ぁっ…い、きそっ…」
震える声で伝えると、晴斗の手が陽汰の陰茎の根元をきゅっと掴んだ。
これはまだイってはいけないということなのか、それともこのままイけという意味なのか。回らない頭で必死に考え、晴斗にそれを問いかけようとした瞬間――
トンットンッ
「――ッ!」
突然のノック音に驚き、陽汰はぎゅっと晴斗の陰茎を締め付けてしまった。その瞬間、ビクビクッと激しく身体が痙攣し、目の前に白い光がチカチカと瞬く。
根元を握り締められていたため射精することは許されず、狂おしいほどの絶頂が襲いかかってきた。
「晴斗、ちょっと出かけてくるからね」
扉の向こうから聞こえてきたのは晴斗の母親の声だ。陽汰と晴斗が部屋の中でこんなことをしているなんて思ってもいないであろう彼女は、いつもと変わらぬ調子で扉越しに晴斗に話しかけてくる。
もしも、少しでも怪しい音や声を上げたらこの状況を見られてしまうかもしれない。
それは絶対にダメだと、必死で声を抑えようとするが、なんと、晴斗はこの状況で抽挿を再開してきた。
中イキしたばかりで全身が敏感な状態なのは晴斗もわかっているはず。それにも関わらず、彼は陽汰を更に快感の渦へと落とそうとしているのだ。
「うん、わかった」
晴斗の落ち着いた声が扉の向こうに投げかけられる。その間も彼の腰の動きは止まらず、陽汰は縋るように近くにあったタオルケットを掴んでそこに顔を押し当てた。
晴斗の匂いがするタオルケットが陽汰の唇の隙間から漏れ出る小さな喘ぎ声と熱い吐息をくぐもらせ、ぽろぽろと流れる涙を吸い込んでいく。
きっと数十秒程度の出来事だったのだろうが、陽汰には果てしなく長く感じられた。
顔を埋めたままぎゅっと強く目を瞑り、必死に声を我慢していると晴斗の低い声が耳元で囁いた。
それはまるで全てのリミットを外すかのような言葉だ。
「もう我慢しなくて良いよ、母さん出かけたから」
「んっ…ひっ、あぁっ!」
言葉が終わると同時に、横抱きにされていた陽汰の身体はうつ伏せにされた。そして、先程までのゆっくりとした抽挿は夢だったのではないかと思うほどに激しく陰茎を突き立てられ、お互いの肌がぶつかる音が響き渡る。
その音は一度だけで止まるはずもなく、肌が赤くなってしまうのでないかと思うほどに何度も繰り返された。
「あ、あぁっ、それっ、はげしっ、ゃ、あぁっ」
「じゃあ、これはどう?」
奥深くまでずっぽりと埋まった陰茎の先端が敏感な生殖腔の入口をぐりぐりと押し上げた。そこをこじ開けるかのような動きに陽汰は反射的に逃げたくなったが、うつ伏せの状態では逃げ場なんて何処にもない。
「お、くっ…ゃ、あっ…おかしくなっ、ぁあっ」
「いいよ、おかしくなって」
彼の言葉が脳に響き、愛液がどぷっと溢れ出す。生殖腔が彼のことを迎え入れようとしているような錯覚を覚え、自然と喉がきゅっと引き締まった。だが、陽汰の予想に反して晴斗は生殖腔へ押し付ける動きを止め、陰茎を僅かに引き抜いた。
彼の予想外の動きに詰めていた息を軽く吐き出す。しかし、その瞬間、それは陽汰の最奥を再び強く貫いてきた。
ぐちゅっ、ぱんっ
「ひ、ぁっ――!」
ガクガクと全身が震え、中に埋まる陰茎を強く締め付ける。
彼の形が内壁で感じられるほどにきつい締め付けのはずだったのだが、晴斗は止まってくれなかった。更に挿入を深くするように陽汰の腰を持ち上げ、何度も強く打ち付けてくる。
「陽汰、ごめんっ、もう少し付き合って」
「ぃ、あっ、もっ、イけなっ、や、ゃあっ、またっ、ひぅっ!」
シーツに爪を立てて本能的に前に逃げようとしたが、腰を強く掴まれて引き戻されてしまった。その一突きで陰茎が生殖腔の中へと入り込み、敏感なその場所を埋め尽くしていく。
苦しさと快感と嬉しさが綯い交ぜになり、ずっとイきっぱなしになっているような感覚が襲いかかってくる。
「はぁ、あっ…はる、とっ…」
「は、ぁっ…陽汰っ…好きだよ…」
「んぁっ、す、きっ…はるとっ…あ、ぁぁっ!」
「クッ…陽汰っ」
陽汰の意識はすでに朦朧としていた。連続での絶頂で極限まで追い詰められた身体は今すぐにでも意識を手放そうとしている。
しかし、それを察したかのように突然うなじに鋭い痛みが走った。そして間髪入れずに晴斗のフェロモンが大量に流れ込んでくる。
「あ、ぁっ…なんれっ…ん、ぁっ」
「陽汰…っ…もう、離れないで…」
すでに番である晴斗が陽汰にフェロモンを流し込む必要はない。しかし、彼は刻みつけるようにフェロモンを流し込んできた。
それはまるで陽汰がこの先絶対に離れないことを願うように。
心も身体も全て晴斗に埋め尽くされていくのを感じながら陽汰は首をこくこくと縦に振った。
「はな、れないっ…もっ、はなれないからぁっ…」
「うんっ、絶対だよ」
ちゅっとうなじの噛み跡に軽い口付けを落とし、晴斗は陽汰の中を強く穿った。
その一突きで陽汰は何度目かもわからない絶頂を迎え、それと同時に体内にある晴斗の陰茎がびくびくと震えるのを感じた。ぐりっと生殖腔が強く押し上げられ、コンドーム越しに大量の精液が放たれる。
「あ、ぁぁっ!」
「くっ…」
ぴくぴくと痙攣する身体を晴斗は強く抱き締めた。その力強い腕は、まるで陽汰のことを決して逃がさないとでもいっているようだ。そして、彼の射精も陽汰に種を植え付けるかのようにいつもよりも長く感じられ、コンドーム越しでもお腹を満たされる感覚にさせられる。
「は、ぁっ…はぁ…はると…っ…」
「陽汰…はぁ…っ…ちゅっ…」
「ん、ぁっ…」
絶頂の余韻が残る中でうなじにキスをされ、快感の混じった吐息が零れ落ちる。
そこに番の証があることを強調するように晴斗は何度も口付けをし、最後にかぷりと噛んで漸く満足したようだ。
陽汰が顔を横に向けるとすぐ傍に晴斗の顔があった。汗の滲む額と少し脱力した表情に何故かドキッとしてしまう。
いつも見ている顔なのにそこから目が離せなくなり、ドキドキと鼓動が早まっていく。すると彼がフッと笑みを零した。
「どうしたの?そんなに俺の顔ジッと見つめちゃって」
「……なんか…いつもと違う…」
「違う?あー、射精が長かった、とか?」
「ば、ばかっ!そういうことじゃ!……いや、けどいつもより長かったかも…」
通常のアルファは受精率を上げるために射精時間が10~30分と非常に長い。だが、晴斗は後天的にアルファになったのに加え、分化の時期も通常の人よりも遅かった。そのため、今までの彼の射精時間はベータと大差なかったはずだ。
もしかしたら、今後、晴斗の身体にはもっとアルファの特徴が現れてくるのかもしれない。
「……俺、耐えれるかな…」
「え、何が?」
「…なんでもない」
疑問の表情を浮かべる晴斗にクスッと笑みを零し、陽汰は晴斗の唇へと触れるだけのキスをした。
この先、晴斗がどんな風に変わったとしても陽汰の晴斗に対する気持ちは一生変わらないだろう。そして、どんなことがあっても二人でなら支え合って乗り越えていける気がした。
「好きだよ、晴斗」
「うん、俺も。好きだよ、陽汰。」
好きなんて言葉だけでは足りないが、こうやって好きだと言い合えることにこの上なく幸せを感じた。それはきっと、晴斗も同じことを思っているはずだ。
同じ気持ちを持った二人は互いに笑みを浮かべ、愛を誓い合うように唇を重ね合わせた。
ともだちにシェアしよう!

