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第3話
白い肌に漆黒の髪、灰色がかった瞳を持つ彼に白くひらりと柔らかに揺れる使用人服は良く似合っていたが、それは妖艶というよりどこか幼さを強く感じさせた。
凪は今年で二十五になる立派な成人男性だが、血筋ゆえかどうにも童顔である。元々、凪が生まれ育った兎堵はディーディア人に比べて皆が細く小さい。それゆえ凪に限らず、外国人は皆、兎堵の人間を実年齢より十歳は若いと勘違いしていることが多いのだ。実年齢を告げて驚かれるだけならばまだしも、偽っているのではないかと疑われたことも両手で数え切れないほどにはある。凪はこの宮殿に努めて十年以上経つが、未だに新人と間違われることも多く、大らかさなど欠片も無い凪はいつもピクピクと怒りにこめかみを引きつらせていた。他国の者が多く住む国とはいえ、おそらくは兎堵の人間が特別小柄なのだろう、靴は特注で、服は自分で手直しをしなければ裾はズルズルと引きずり、胸元が開きすぎてみっともないことになってしまう。それでも凪が不自由を感じてもこの国に、もっと言えば王族がいる宮殿に外国人でありながら使用人として住んでいるのは、彼の母親が国王の愛人として囲われたからに他ならない。
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