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第5話
その日から凪はサーミフの使用人として、第二王子が王から与えられた宮殿の一角で働いている。最初は慣れないことに悪戦苦闘し、失敗も数えきれないほどしてきたが、サーミフは大らかな性格であるのか、折檻どころか叱責されるようなこともなく、今ではいちいち頭で考えずとも動けるまでになった。母の身分を考慮してか、下男ではなく王子の側仕えとして遇されているのも幸運だったと言えるだろう。昔は後宮に出入りできる男の使用人は皆、去勢して性交できぬ身体、子孫を残すことのできぬ身体にならなければならなかったが、幸いにも技術が発達した今は専用の貞操帯と首輪さえつけていれば去勢をしなくてもよくなった。貞操帯といっても技術の進歩に伴って不快さなどはなく、ともすればつけていることを忘れるくらいだ。排泄にもなんら支障はなく、去勢のように命を懸けることも尿が垂れ流しになることもない。ただ異性と性交することができず、入浴時間などの許可された時間以外に外せば首輪を通じて管理者に通報されるだけだ。邪な気持ちを持たなければ衣食住に困らず、厄介な主でもないこの仕事は天職だと言えるだろう。
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