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第6話
「あら、ナギだわ」
後宮に足を踏み入れれば、まだ朝も早いというのに美女たちが大広間――と皆は呼んでいるが、正確には共同の大きな居間だ――に集まって華やかで穏やかな仮面を取り付けた会話を繰り広げていた。彼女たちはサーミフのお妃候補として集められた者達で、高貴なお嬢様もいれば、平民であるが美しく気立ての良い娘もいる。皇子でも産もうものならその身分は特別尊いものになるのかもしれないが、それまでは生まれがどのようなものであれここでは皆が平等の立場だ。実家から使用人を連れてくる者もいるが違いなどその程度で、与えられる使用人の数も、部屋の質も、食事や衣服も大差ない。彼女たちはサーミフが手を伸ばしてくれることを心待ちにし、その機会を少しでも増やそうと、こうして彼が通るであろう場所に集まり、そして側近くに仕える凪から情報を得ようと、あるいは口利きをしてもらえないかという下心で近づいてくる。
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