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第7話
「ねぇ、今から殿下の元へ行くの?」
「そのトレー、私が持ちましょうか」
「殿下は今日、お忙しいの?」
めいめいに凪に纏わりついては口々に話す美女たちに、凪は胸の内で盛大にため息をついた。彼女たちはサーミフのお手付きになるかもしれない――つまりは未来のお妃さまになるかもしれないため邪険に扱うことはできないが、こうも毎日毎日行く先々で纏わりつかれては鬱陶しいし、仕事に支障が出る。
「殿下のご予定は侍従長が把握しているので私は存じません。トレーも自分で持てますのでお気遣いなく。殿下のご起床が遅れては大変ですから、そろそろ通してください」
こんなことで怒っても凪が後から侍従長に怒られるだけで事態は何一つとして好転などしない。改善されることなど無いものに対して怒るだけ無駄で損だと凪は努めて淡々と話した。仕事はできるようになってきたのに、にこやかな対応が出来ないところがまだまだ子供だと侍従長は評するが、凪としては顔を盛大に顰めないだけマシと思ってほしい。
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