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第9話

「おはようございます、殿下」  薄暗い部屋はシンと静まり返っていて、凪は小さく息をついた。サイドテーブルに銀のトレーを置き、分厚いカーテンを開く。金の装飾が施された美しい窓からは柔らかな日差しが降り注ぎ、室内を明るく照らした。 「殿下、朝でございます」  声をかけ、透けるほど薄い天蓋を横にまとめる。大人が四人は余裕で寝転べるであろう大きなベッドでは、凪の主人であるサーミフがスヤスヤと眠っていた。この主人は優しく人が良いが、寝起きが良くないのが欠点である。現にこれほど室内が明るくなり、心持ち大きな声で凪が声をかけているというのに瞼が開くどころか、胸は規則正しく上下し乱れる様子も無い。実に心地よさそうで深い眠りだ。 「失礼いたします。殿下、朝でございます。起きてください」  ディーディア人が四人寝ても余裕があるだろうベッドは、小柄な凪には大きすぎる。それゆえにシーツを汚さぬよう慎重に片膝を乗せ、身体を近づけてから凪はサーミフの肩を揺さぶった。 お休みさせていただき、ありがとうございました! 更新再開していこうと思いますので、またどうぞよろしくお願いいたします。 十時(如月皐)

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