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第11話

「おはよう、ナギ。首が変な方向に曲がるかと思ったぞ」 「声をかけた時に起きられない殿下が悪いですね」  首元を摩りながら拗ねたようにサーミフは言うが、凪は一瞥することもなく跳ね返した。おおよそ主人――それもこの国の第二王子に対してする態度ではないが、凪はここに雇われてからずっとこの調子なのだ。侍従長などは頭を抱えているが、サーミフはどこか楽しんでいる節もある。 「湯殿も丁度良い温度に調節してあります。早くなさらないと朝食の時間が無くなりますよ」  サーミフの大きな足に室内履きを履かせて、凪は早く早くとサーミフを急かした。本来であれば王子であるサーミフの支度の手伝いは十人ほどの使用人が手分けして行うのだが、大勢に纏わりつかれることを厭うサーミフの命令で、今は凪が一人で行っている。そのため時間に余裕などないのだ。

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