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第12話

 サーミフが湯を浴びている間に凪は手早くベッドを見苦しくない程度に整え、柔らかなタオルと今日の衣装を用意する。絹の敷かれたトレーに衣装にあう装飾品を並べ終えれば、丁度サーミフが湯からあがる音がした。足早にそちらへ向かい、用意していたタオルを広げてサーミフの身体を包み込む。もっとも、小柄な凪では充分に包み込むことはできないので、サーミフがほぼ自分でタオルを被ったという方が正しいが。 「今日は檸檬の香りがしたな。花も良いが、朝からスッキリとした気持ちになる」  朝は必ず湯に浸かるサーミフの為に心地よい空間を作るのは使用人の仕事だ。以前は別の使用人が行っていたが、彼が妻を娶って宮殿の外に家を建て通いで働くようになってから、何故か凪の仕事になっていた。他にもたくさんの使用人がいるというのに、サーミフに関する仕事が次々と凪に持ち込まれるのは不満だが、その分、掃除やお妃候補の世話などをしなくて良いので内心を声にも顔にも出すことはしない。

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