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第13話
「本日は既に随分と暑いですから、花の香りは重いかと思いまして」
「なるほど。ではナギのおかげで今日も心地よく過ごせそうだ」
クスリと愉快そうに笑うサーミフをチラと見て、凪は手早くサーミフの身体から水滴を拭うと、側にある寝椅子に寝転ぶよう促して同じく檸檬の香りをした精油を薄く塗りこめた。そして用意していた衣装を着せ、首や耳に装飾品をつける。膝をついてその足に豪華な靴を履かせれば完成だ。
「隣のお部屋で侍従長がお食事を用意してお待ちです」
どうぞ、と促せばサーミフもひとつ頷いて立ち上がる。寝起きこそ悪くゴロゴロとベッドに懐く主人であるが、一度離れてしまえば覚醒も早い。確かな足取りでこの寝室と扉一枚で繋がっている隣の部屋へと向かった。
「おはようございます、殿下」
サーミフが姿を現した瞬間に、低くも心地よい声が響き、それに続くようにして使用人たちがおはようございますと挨拶する。跪く彼らに立つよう促したサーミフは柔らかなクッションが置かれている場所に座った。侍従長が丁寧にサーミフの手を清め、使用人たちが料理の盛られた皿を捧げ持つ。
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