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第15話

 他愛無い話をサーミフと侍従長が繰り広げていれば、いつの間にか朝食は終わっていた。立ち上がったサーミフに侍従長と凪が付き従う。ようやく出てきたサーミフに美女達が朝の挨拶とかこつけて纏わりついていた時、タタタ、と小さな足音が近づいてきた。そしてドン、と勢いよく凪の足に衝突する。 「おはよう! お兄さま」  ニコリと微笑んだのはまだ九歳と幼い王女・ナイーマだった。褐色の肌に黒い髪、人懐っこい笑みを浮かべる頬はふくふくとしていて、大好きな兄を見上げている。  そう、王女はサーミフの異母妹であるが、彼女が言う〝お兄さま〟は視線の先にいる凪のことだ。  彼女は、母と国王の間に生まれた王女。サーミフの異母妹であるが、同時に凪の異父妹でもある。 「おはようございます、王女殿下」  妹であるが、彼女は王女で、凪はただの使用人だ。立場を弁えるように一歩下がって膝をつき頭を垂れる。その姿に凪を慕って度々ここを訪れるナイーマはぷっくりと頬を膨らませて口を尖らせた。

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