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第16話
「それ嫌いっていつも言ってるのに! どうしていつもナイーマの嫌なことするの?」
ナイーマは他の兄妹たちを見ているからか、同母の兄妹に夢を見ているようだった。宮殿にいる彼らのように一緒に遊んだり、笑いあったり、ご飯を食べたりしたいし、頭を撫でてほしい。しかし凪はいつだって一歩後ろに下がり頭を垂れて、遊んではくれるけれどナイーマの見る兄妹たちのそれではないし、まして一緒にご飯など食べてくれない。そしてナイーマが凪に触れることはあっても、凪からは決してナイーマに触れることは無かった。そんな彼が頭を撫でてくれるはずもない。
「あなた様が王女殿下であらせられるからですよ」
どうして止めてくれないのかというナイーマに対する明確な答え。それを納得できないと拗ねているナイーマの耳には、きっと聞こえていないのだろう。
クスクスと嗤う、嫌な声。
同じ母から産まれたというのに、片方は尊き王女で、もう片方は跪く使用人。
可哀想に、という声は、誰に向けられたものだろうか?
声高に何度も〝お兄さま〟と呼ぶナイーマと、ただ静かに、けれど妹と呼ぶことは決してしない凪。クスクスと嗤う女たちに紛れて、ジッとサーミフがその姿を見ていた。
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