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第17話
国王即位三十周年。その記念すべき式典が三日後に行われる。王を敬愛する国民は店や家の玄関にディーディアの国旗を掲げ、国王にちなんだ記念の商品が数えきれないほどに売られる。式典に参加するため各国の王族や大統領などが次々とやって来て、既に国中がお祭り騒ぎだった。そんな中を凪はひとり、足早に歩いていた。
確かな働きで王室からも信用されている王都の宝石商に向かう。王族からの依頼ならば出来上がった品を店側が宮殿に持ってくるものだと思うが、なぜかサーミフは使用人に取りに行かせるのだ。それは凪が彼の使用人として働きだす前からの習慣らしく、理由こそわからないが、十年以上も働いていれば慣れたものだと、いつもの道を歩いた。宮殿からそう遠くない場所にある店に入り、被っていたマントのフードを下ろす。すると待っていたのだろう店主はすぐににこやかな笑みを浮かべ、恭しく頭を下げた。
「お待ちしておりました。すぐにお持ちいたしますね」
そう言って奥へ下がった店主は、本当にすぐに戻ってきた。箱さえも高級品とわかるそれを、手袋のつけた手で一つ一つ開けて凪に見せる。
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