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第19話
「あの、非常に申し上げにくいのですが」
その、と言葉を濁した店主は、無礼をお許しくださいと告げて渡した紙幣を透かすように持ち上げた。ジッと下から紙幣を見つめている店主は小さくため息をつき、首を横に振っている。何か問題があったのだろうかと凪が口を開きかけた時、店主は凪の前に出していたし品を手早く回収し、厳しい目を向けてきた。
「この紙幣は本物ではありません。いかに殿下の使いの方であったとしても、私はいち国民として贋金を受け取るわけにはいきません」
「え……」
予想もしていなかった言葉に凪は大きく目を見開く。店主が厳しい顔で尚も何かを言っているが、その言葉を理解することができない。呆然とする凪は、店主が呼んだのだろう警察に肩を叩かれても、手を引かれても、何もできずただただ目を見開くばかりだった。
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