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第20話
なぜ贋金を持っていたのかと警察で問い詰められた凪であったが、そもそもその金は凪の物ではないため「わからない」と繰り返すより他ない。幸いなことに凪は使用人服のまま店を訪れたので、マントを脱げばすぐにその服と首輪で身分を証明することはできた。そして数時間が過ぎたころ、侍従長が迎えに来てようやく凪は解放されたのだった。侍従長の後ろを無言で歩き、促されて入った部屋にいるサーミフの前に跪く。
「お忙しい中、ご面倒をおかけして申し訳ございませんでした」
凪の責任ではないとはいえ、失態は失態だ。式典の用意という誰もが忙しい最中に侍従長を迎えに来させたばかりか、金が本物でないがゆえに頼まれた品物も受け取ってくることができなかった。唇を噛みながら俯き、顔を上げぬ凪に、サーミフはひとつ息をつく。ピクリと凪の肩が小さく跳ねた。
「私の金庫から金を出したのだ。此度はお前の責任ではないだろう。なぜ金庫に贋金が入っていたかはまだわからないが、それも調査すればわかることだ。お前がやったという証拠もないのだから罪歴がつくわけでもない。何も気にするな」
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