22 / 107

第22話

 国王即位三十周年を記念して祝砲が打ち上げられ、国中にディーディアの国旗が翻る。宮殿では色とりどりの正装をした各国の要人たちが国王に祝辞を述べ、王子や王女たちと歓談していた。ここは国王の在位を祝う場であるが、同時に外交の場でもある。様々な話をして国と国との交友を深め、絆を結び、国民の平和と豊に繋げなければならない。そのためサーミフも優雅に振る舞いつつも忙しく人々とグラスを傾け、時にジョークを交えながら会話に勤しんでいた。そんな時、ザワリと多くの人々が静かに騒めく。一瞬にして変わった空気に、凪も視線を向けた。そこには明るい金にも茶にも見える長い髪をした長身の男と、彼よりは頭一つ以上低い黒髪の華奢な男がいた。その姿に凪は苦いものが込み上げてくるのを感じる。 「久しぶりだね、サーミフ。陛下の即位三十周年とは真にめでたい。心よりお祝い申し上げよう」  国王への挨拶を終えたのだろう、長身の男が華奢な男を従えたままサーミフに近づく。そんな彼にサーミフは深く会釈をした。

ともだちにシェアしよう!