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第24話
「それはありがたい。そちらの使用人たちにも随分と気を遣わせてしまったことだろう。感謝しているとお伝え願いたい。そうそう、ヒバリと一緒に贈り物を選んだんだ。後ほどお届けに伺っても?」
国王ではなくサーミフに? と凪は疑問に思った。だがサーミフは穏やかな笑みを浮かべて躊躇いも無く頷く。
「それはありがとうございます。甘い菓子を用意してお待ちしております」
それでは、と穏やかに言って、サーミフとウォルメン閣下は離れた。何でもない、ありふれた光景であるはずなのに、凪の心は騒めく。それはあの艶やかな黒髪を見たからだと理解しているからこそ、ため息が零れ落ちた。
凪はサーミフの側仕えだ。侍従長もいるとはいえ、よほどのことが無い限り自分も主の側に侍らなければならない。
(帰りたい)
ポツリと胸の内で呟き、また零れそうになったため息を、ここがどこであるかを思い出して咄嗟に呑みこんだ。
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