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第25話

 多くの人が夢見る高貴で華やかな祝宴が終わると、途端に静けさが宮殿を包む。先程までグラスを傾けていた人々は宿泊先に戻り、今頃はゆったりと寛いでいることだろう。使用人たちは祝宴の後片付けでバタバタと動き回っているが、凪はサーミフに命じられて侍従長と共にサーミフの私的な応接間に菓子や軽食、軽めの酒やジュースを用意していた。  ディーディアは床に厚手の絨毯を敷き、クッションに凭れてくつろぐのが一般的であるが、今回は文化の違いを考慮してフカフカと座り心地の良いソファとテーブルを趣味よく配置した。すべてを品よく整え、その出来をグルリと見渡してホッと息をついた時、凪の主であるサーミフが姿を現した。咄嗟に皆が膝をついて頭を垂れる。 「あぁ、楽にしてくれ。もうすぐウォルメン閣下が来られる。世話は侍従長とナギだけで良いから、閣下が来られたら皆は下がれ」  私的な交流に多くの使用人の目があっては互いに寛げないだろうという配慮に、凪を含めた使用人たちは再び頭を垂れる。この部屋で本当に〝私的な〟交流などしたことがないだろうに、という皮肉は胸の内に押しとどめ、決して表に出すことはしない。  そして使用人たちが壁際に並んで控えた時、外から使用人の声が聞こえて侍従長直々に扉を開けた。その瞬間、一糸乱れぬ動きで使用人たちは頭を下げる。

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