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第26話
「お邪魔するよ」
扉の向こうから現れたウォルメン閣下は、先程の正装姿とは異なり自国のシンプルだがどこか華やかさのある衣装を纏っていた。その後ろにはやはり藍色の衣装を纏っているヒバリの姿もある。
笑みを交わし合い、サーミフが促して二人がソファに腰かけると、音もたてずにグラスが置かれた。サーミフとウォルメン閣下には酒を、ヒバリの前には果肉の入ったジュースだ。そして事前に命じられていた通り、侍従長と凪を残して使用人たちは静かに退室する。凪も侍従長と共に壁際に控えた。
「まずは乾杯を」
サーミフがグラスを持つと、ウォルメン閣下も微笑んでグラスを取る。閣下に促されたヒバリもグラスを持ち、三人同時に乾杯した。最初のひと口を飲んでグラスをテーブルに置いたウォルメン閣下がヒバリに視線を向ける。それを受けてヒバリは閣下にリボンのかけられた白い箱を渡した。
「これは君への贈り物だ。喜んでもらえると嬉しいのだが」
差し出されたそれに丁寧な礼を言って、サーミフは受け取る。開けても? との問いかけに頷きが返されて、サーミフはゆっくりとリボンを解いた。
「これは素晴らしい。見事な織物の財布ですね」
ウォルメン閣下が居住しているセランネ国の伝統的な織物を使用した財布にサーミフは笑みを浮かべる。そして紙幣を入れる部分にチラと視線を向け、サーミフは財布をそっと箱に戻した。
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