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第27話

「貴重な品をありがとうございます。ここにいる者達は既に知っておりますから、この財布の意味を、お教え願えませんか?」  必要な人払いは済ませてあるというサーミフの言葉にウォルメン閣下はチラと凪の方へ視線を向けた。その視線が何を思っての事かわからず凪は緊張に汗を滲ませる。しかしウォルメン閣下は特に何を言うでもなく視線を戻し、サーミフに微笑んで見せた。 「こういったことはこの国の誰よりも君が詳しいのではないかと思ってね。お渡ししたのは、偶然貧民街で見つけたものだ」  貧民街、とウォルメン閣下は言葉を濁して言ったが、彼の言うそこは表の世界には出ない闇の街だろう。  光を表すエルメンの名を持つセランネ王家と対を成すウォルメン。その名を持つ閣下は闇の支配者なのだ。

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