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第28話

「この国は明るい意味で他国の者が多いが、あの街は明るくない意味で他国の者が沢山いてね。用いられる通貨も様々だ」  この世界に国は多い。その火の粉がディーディアに降りかかっていないというだけで、今もあちこちで戦が行われ、幾つもの町が焼き払われ、幾万の人々が故郷を、家を、家族を、そして自らの命を失っている。そんな国から命からがら逃げてきた者も、ウォルメン閣下の言う〝街〟には多いのだ。そんな人々を狙って商売しようとする者も集まるのだから、通貨が様々であるのは容易く想像できる。 「ディーディアで使われる通貨は、我が国独自のものではありませんからね。確かに、この通貨を使用している国の幾つかは戦火が絶えない。おそらく、閣下のお膝元にこれが流れた理由もそのようなところでしょう」  ディーディアには関わりないこと、とは言えない。なにせそのディーディアの、それも王族たるサーミフの懐からも〝それ〟は出たのだ。  知らぬ、関係ない等と言って手を打たなければ、たちまちディーディアが崩壊してしまう。

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