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第29話

「ひとつ、確認しておきたいのですが」  よろしいか、との問いかけに、ウォルメン閣下はどうぞ、と促す。 「此度の件、貴国にも及んでいる時点で既にディーディア国内だけの話ではなくなりました。私も全力で解決に臨みますが、私の力が及ぶのはこのディーディア国内のみ。他国の事情、それも深淵に身を隠しているような者達には後れを取るでしょう。そのようなこと、閣下は充分ご承知のはず。それでもこれを私に贈ってくださったということは、此度の件に関しては、閣下のご協力をいただけると思ってよろしいでしょうか」  事がディーディア国内に収まらないのであれば、いかに王子であろうとサーミフにできることは限られてくる。それに、闇のことは闇の支配者に頼るのが一番だ。様々な事情からウォルメン閣下はあまり動くことが無いとはいえ、今回はサーミフが相談する前に彼から話を持ってきたのだ。流石にここまでして後はサーミフに丸投げ、などということはしないだろうと視線を向ければ、彼はクツリと笑った。

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