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第30話

「勿論、こちらが持つ情報はできうる限り逐一報告しよう。あの街に住むのは、悪だと切り捨てるには事情がありすぎる者が多い。だからこそある程度は関与しないと決めているが、流石に此度の件は国の根幹を揺るがす事態にもなりかねないからね。私個人として力を貸すのは構わないよ」  セランネ国は独自の通貨を使っているため、今回は表向き無関係だ。だからこそウォルメン閣下は〝個人〟を強調したが、サーミフにとってはそれで充分だ。 「ありがとうございます。では、少しお願いが」 「お願い?」  なんだろうか、とウォルメン閣下は先を促す。その瞳を真っ直ぐに見つめ、次いでその隣に座る黒髪の彼に移した。 「此度の件は事の真相がわかるまであまり公にしたくはありません。そこで、閣下が帰国された後、少しばかりヒバリ殿をお貸し願いたい」  その言葉にずっと黙っていたヒバリと凪が同時にピクリと肩を揺らした。何を言っているのだ、と問いかけるような視線を向ける。その視線にもサーミフは動じず悠然と構えており、ウォルメン閣下は微笑みながらも目を細めた。

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