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第31話
「確かに私がここに長く滞在していればいらぬ憶測を招くだろうが、なぜヒバリを残してほしいと? ヒバリとは一緒にいることが多いから、例えヒバリ一人だったとしても目立つとは思うのだが」
公式行事にウォルメン閣下がヒバリを伴っても、誰も何も言わない。既に伴侶同然と認められているヒバリの顔は多くの王侯貴族が知っているだろう。それに、ウォルメン閣下とヒバリは〝別の意味〟でも有名なのだ。使用人とはことなり、ヒバリが素性を誤魔化し人々の中に紛れ込むのは難しい。だというのにサーミフは譲ろうとしなかった。
「ヒバリ殿の立場を完璧に誤魔化せるなどとは思っていません。ですがそれ以上に滞在していただくメリットの方が大きいと私は考えます」
ゆったりとサーミフは膝の上で指を組む。彼が何を言いだすのかと凪も耳をすませた。
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