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第57話
「静かに調べものがしたい。ナギ、人払いも頼んだ」
遠回しに付いてくるなと美女達に言って、サーミフはスタスタと歩いてしまう。そんなサーミフに縋ることは流石にできないのか、美女達は恨みの籠った目で凪を見た。そんな目で見られても凪はただの使用人。サーミフの考えを覆す権限はないし、そもそも図書室にだって凪が誘ったわけではないため、そんな目で見られるいわれはない。理不尽だ、と胸の内でため息を零しながら凪も美女達を避けてサーミフを追いかける。図書室に入る前に扉の前で警護をしていた兵士に人払いを命じ、パタンと扉を閉めた。
「それで、殿下は何をお調べに?」
必要な本を探してくると言う凪に、サーミフはチラと視線を向けながらソファに座った。
「あぁ、何でもいい。適当に何かの資料に見えるようなものを数冊、ここに置いてくれ」
ここ、と目の前のテーブルを指さすサーミフに、凪は何を思うことも無く頷いた。ただ美女達から逃げたかっただけなら、調べたいものなどあるはずもない。適当な命令に、凪もまた適当にそれっぽく見える小難しい題名の書かれた書物を数冊手に取り、テーブルに置いた。その瞬間、カタン、と小さく音が鳴る。何だろうと顔を上げた瞬間、凪は息を呑んだ。
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