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第59話

「先程ヒバリ殿が来られていたのに、ナギは気づいていなかったのか?」  ヒバリをソファに促しながら、サーミフは凪に視線を向ける。どうやら先程サーミフに群がっていた美女の中にこの変装をしたヒバリがいたらしい。そして誰にも気づかれぬようサーミフの手を一瞬引いて自分を視認させたということだ。ずっとサーミフを見ていた凪であったが、まったく気づかなかった。 「では図書室に行くと仰ったのもこのために?」 「あんな所では話せないだろう?」  当たり前に言うサーミフに凪は小さくため息をついた。なるほど、逃げるためではなく誰かに見られても良いように〝資料に見えるようなものを数冊〟必要としたのか。 「さて、ナギも状況を理解したことだし本題に入ろう。ヒバリ殿、何か問題でも起きましたか?」  ヒバリの正面に座りながら言うサーミフに、凪は何とも言えない気持ちになる。考えや観察力が足りないと言われたような気がしてなんとも居心地が悪いが、気づかなかったのは事実であるため言い返すこともできない。部屋に帰ってふて寝でもしたい気分だが、今の凪に許されるのは、ただ黙って茶の準備をし、サーミフの後ろに控えることだけだ。

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