62 / 107

第62話

「……ヒバリ殿には失礼なことを言った。申し訳ない」  カップを置いて謝罪するサーミフに、ヒバリはほんの微かに頷いた。手に取ることなく、カップの中にある茶を見つめる。 「いいえ。明確な線を引くことは私のためでもあります。私が惑えば調査は無駄に長引き、閣下の元へ帰るのも遅くなってしまいますから」  やはり絶対的な力を持つ庇護者が側にいなければ不安なのだろうか。ヒバリの瞳が僅かに揺らめく。もう子供でもあるまいに、まるで迷子の幼子のような寄る辺なさを感じる。 「もちろん、こちらもヒバリ殿が一日でも早く閣下の元へお帰りになれるよう尽力しましょう。真相が明らかになることを望んでいるのは、私の方ですから」  どこか含みがあるように聞こえたのは気のせいだろうか。チラと凪がサーミフに視線を向けるが、彼はそんな凪に気づいているのだろうが反応一つ見せることはなかった。 「では早急に警察が入手している情報をヒバリ殿の元へ届けさせます。こちらの事情で申し訳ないが、あまり多くに事情を明かすことは避けたいのでヒバリ殿への伝言などはここにいるナギに一任します。ヒバリ殿も何かあればこのナギに遠慮なく申し付けてください。ナギに用意できぬものであれば私が用意しますし、ディーディアの地理には詳しくないでしょうから、外へ調査に出られる時もナギを一緒に」

ともだちにシェアしよう!