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第63話
贋金の件が発覚してから否応なく関わることになるだろうと覚悟はしていたが、まさかヒバリと一番深く関わる位置につけられるなど思ってもいなかった凪は、ヒバリと共に調査しろと直接命じられた時と同じように視線を遠くへ投げた。嫌だ嫌だと何度か抵抗を見せていたが、どうやらまったく効果はなかったらしい。そんなヒバリの諦めにも似た心中を読み取ったわけではないだろうが、ヒバリもまた小さく首を傾げてサーミフを見た。
「凪殿が、ですか?」
「ええ。きっとお役に立つでしょう」
「……よろしいのですか?」
「もちろんです」
ポン、ポン、とまるでボールを投げているかのように交わされる会話に凪は静かに瞼を閉じた。ヒバリが何を意図して言っているかなど凪にわかろうはずも無いし、わかろうとも思わないが、どうせ自分の運命は変わらないのだと突きつけられるだけの会話など聞くだけ無駄だ。必要以上にイライラし、卑屈になってしまうのだから意識を別の方へ飛ばしていた方がよほど有意義だろう。さて、今日の夕食は何だったか。
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