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第65話
「楽しそうですね」
現状に反して、とは流石に口にしないが、凪の視線からそれを読み取ったのだろう、サーミフはクツクツと笑いながらも凪に視線を向けた。
「いや、少し意外だっただけだ。こういったことに関しては有能という噂は聞いていたが、まさかこれほどとはな。閣下の小鳥は籠で大切にされた、ただの愛鳥というわけではないらしい」
令嬢に化けても違和感がないほどに美しく白い肌、程よく引き締まり、程よく丸みを帯びた絶妙な四肢、艶やかな桃色の唇に、儚げな肩。絶対的な力を持つ闇の王が囲い、慈しむ存在。何の苦労も苦痛も知らないように見えるというのに。そんな彼がまさか凪にも気づかれずサーミフと接触し、図書室の窓から出入りするとは。
「まぁ、すべてが予定調和などあるはずもない。……ナギ、カップを片付けたら裏門へ」
ヒバリ殿を頼む、と言ってサーミフは音もなく凪に近づき、彼の持つ鍵でカチッ、と凪の首輪を外した。
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