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第69話

「私に関してであれば、凪殿が恐れていることは何一つとして起こりはしないと断言しましょう。ただ、私もそう強いわけではないので、凪殿を守れるかどうかはわかりません。しかし護衛がいては、それがどれほど離れた場所であっても相手に警戒される元になってしまいますから」  一度怪しまれたら終わりだ。警戒されれば動きは制限され、相手が雲隠れするだけの時間を与えてしまう。そして一度警戒した者はそう易々と警戒を解いたりしない。つまり、真相も犯人も暴くことができず、贋金が製造され流され続けることとなるだろう。 「怪しまれないためにも策を変えることはしませんが、護れるという保証の無い現状で無理強いはできません。ですから、危険と判断されたら凪殿はお戻りになってください。殿下には私からお伝えいたします。私は嘘つきですから、理由は如何様にも。ですからご安心ください」  その言葉で何を安心しろと言うのだろう。凪はピキピキと己の血管が震えているのがわかった。

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