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第79話
連れがいると思われては面倒だから。
宣言通り夜に王宮の外へと向かったヒバリは後ろを歩く凪にそう言って物陰に身を顰めた。
「私は少し後に入りますから、凪殿は先にあの店に入ってください。何もしなければ怖い場所ではありませんから」
どこで何を調べたのやら。ディーディア国内に関しては凪の方が詳しいはずなのに、ヒバリはまるですべてを知っているかのような口ぶりだ。夜に繁盛する店はいくらでもあるというのに、ヒバリが指し示したのは少し奥まった場所にある店だ。隠れているわけではないが、見つけやすい場所でもない。いくらでも〝怖い場所〟になりそうだが、ヒバリは大丈夫だと言う。それでも渋面を作る凪に、ならば自分が先に入るか、あるいはこのまま凪だけ帰っても良いとヒバリは言った。
「この件に関わらず、私は大抵独りで動いていますから、何も問題はありません。書面もお渡ししましたし」
ヒバリは口に出さないが、おそらく一人の方が動きやすいのだろう。考えて、それもそうかと凪はひとりごちる。凪はただの使用人だ。隠密に長けているわけでなければ武芸に長けているわけでもない。ヒバリからすればただのお荷物だろう。ヒバリから約束した一切の責任は問わないという書面も貰っているのだから、凪はこのままここで待機していても許される。だが、サーミフの目を考えるならヒバリの側を離れるのは下策だろう。
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