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第83話
「そ、そんなことないさ。大人だって辛いのが嫌いな奴は山ほどいる。ここはそういう奴でも充分に楽しめる料理や酒がいっぱいあるんだ。だから、またちょくちょく来いよ。一緒に飲もう」
なにやら口説かれているようだ、と摘まみを口にしながら聞いていた凪は胸の内に溜まる何かを吐き出したくてたまらなくなった。だというのに、真正面から口説かれているはずのヒバリは無垢を装いながら楽しそうに笑い、男と会話を弾ませている。チラと視線を向ければ、ヒバリは男の腕に手を添えながらその瞳を見つめていた。顔はさほど近くはないが、ディーディア人とは比べ物にならないほど小柄で華奢なヒバリは自然と見上げるような体勢になり、男はそんなヒバリの腰をさりげなく抱いている。
初対面の男相手に、それも男であるヒバリが色を仕掛け、そして難なく成功している。どういう仕掛けか凪にはサッパリわからないが、それでも一つだけ確信することができた。
情報収集が得意だと噂のヒバリ。彼が武器に使っているのは、己の身体と色香なのだと。
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