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第86話

「水晶だろうがガラス玉だろうが、どうでも良いです。あの子達が嘘をついたのか否かについても。私としては、ちょうど良い物が手に入ったということですから」  こんなオモチャみたいなガラス玉が? と言いそうになった凪は咄嗟にそれを吞み込んだ。流石にそこまで深入りしてはいけない。 「……それで、そのガラス玉以外に何か収穫はありましたか?」  凪が聞いていた限りでは、おかしな会話はなかった。店の中も一般的で、奥まっているからと警戒していたわりには良くも悪くも普通でしかなかった。店員も愛想は無いが悪人にも見えない。まぁ収穫は無いだろうと軽く尋ねた凪にヒバリはそっと静かに視線を向けた。 「あの店は、兎堵がお好きなようです」  兎堵――凪の生まれ故郷が突然出てきて、思わず足を止める。目を見開いた凪に、ヒバリは言った。 「そういえば、凪殿も兎堵の方でしたね」

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