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第96話
「……そうだな。凪はいつも通りだ。だが、凪が夫人の子供である限り全てを信じることはできない。凪とヒバリ殿の関係について何かわかったか?」
チラと視線を向けるサーミフに、侍従長も小さく頷く。
「まだ調査は続けておりますが、少なくとも夫人と凪は一度、兎都でヒバリ様と接点があるようです。その時ヒバリ様はウォルメン閣下と兎都を訪れておられたので、いつものことと言えばいつものことなのですが。ヒバリ様と兎都の関係や、ヒバリ様の出自などについては調査中です。流石にウォルメン閣下が側においておられる方だけあって、調査は難航しているようですが」
ウォルメン閣下も謎の多い人物ではあるが、それでも闇を統べる王として、そして表向きは公爵として動いている分、まだ情報は多い。しかし何の爵位も仕事も持たず、ただひたすら閣下の側近くに侍るヒバリに関しては何もわからないに等しかった。
ウォルメン閣下の手足となって情報を集めているという噂はあるが、それもあくまで噂。今回のことで閣下もヒバリも否定せず、贋金について調査していることからあながち嘘というわけではないのだろうが、現状は成果も出ていないためその腕がどれほどかはわからない。確実にわかっているのは変装と場に溶け込む腕くらいだろう。
そんな相手に凪は嫌悪を抱き、その感情を隠しもしない。そしてそれが凪の〝本当の姿〟なのかもサーミフにはわからなかった。
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