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第97話
(あの夜、ポリーヌと何を話していた?)
あまり近づけば、凪はともかくとしてヒバリやポリーヌは勘づくだろう。どれほど普通の見た目をしていたとしても彼らはウォルメン閣下に仕える者だ。警戒するに越したことはないが、それゆえにサーミフが従えている諜報員であっても調査の時もあの夜の密会も遠くから姿を確認するのが精一杯で会話を聞き取ることはできなかった。明確にわかっているのは凪が嫌いだと言って憚らない相手に会いに行ったという事実だけ。これがヒバリやポリーヌ相手ではなく、凪も兎都の者でなければ、そういう年頃なのだからと流すこともできただろうに。
だが現状はそんなこと、許されるはずもない。
「引き続き監視を怠るな。それから、夫人の様子も探れ。この王宮に傷は許されない」
それが大きな傷であるなら尚更に。
「かしこまりました。殿下の仰せのままに」
侍従長が恭しく頭を垂れる。その様子にサーミフは果実水をゆっくりと口に含んだ。
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