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第101話
今日はヒバリが目をつけた件の店に行く日だ。夜道はともかく、明かりのついた店内で顔は隠しづらく、ヒバリと同じ日、同じ時間帯に同じ人物が店にいては流石に勘繰られるだろうと言われ、ここ最近の凪は店に行く前にヒバリとポリーヌの手によって顔を変えるくらいの変装を施されている。出来上がる度に鏡を見せてもらうが、毎回別人のような顔、そして雰囲気になるのだから驚きだ。きっとこのままサーミフや同僚の前に出たとしても、誰も凪だと気づかないだろう自信がある。流石に声をガラッと、それも何種類にも変えることはできないが、言葉を発するのはせいぜい注文の時くらいだ。その時だけ少し声を低くしたり高くしたりして難を逃れている。今日は少し暗い顔立ちの野暮ったい男に変装したから自身の中で一番低い声にしてみようか。そんなことを考えている間にヒバリも服を着替え、街の一般庶民に姿を変えた。ハッ、ハッと舌を出しながらニコニコと笑っているロールの頭を優しく撫でて、あまり人目につかぬよう外へ出る。そしてグルグルと角を曲がったり方向転換するなどして余計に歩き回ってから、ヒバリと凪は別々に目的の店へと入った。
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