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第102話
「お、来たのか。今日は珍しい酒が入ってるらしいぜ」
凪が入店しても視線ひとつよこさなかった客たちが、ヒバリが姿を現すとすぐに顔を上げて声をかけた。皆がヒバリに微笑んだり片手を上げて挨拶をしている。それのひとつひとつにヒバリも笑みを浮かべたり片手を上げたりして、そしていつもの席へと腰を下ろした。
「珍しいお酒? 辛い?」
隣に座っている男にヒバリは小首を傾げながら問いかける。辛いのであれば無理だと眉を下げているが、その瞳には好奇心を隠せていない。そんなヒバリに男はハハッと笑った。
「辛かったら言ったりしねえって。流石にあんたの好みはわかってるよ。これはどちらかというと甘いやつだ。俺も昔飲んだことがあるが、まさかディーディアで飲める日が来るとはな」
「へぇ、外国のお酒かぁ。どんな感じの味が?」
辛くないと聞いて、途端にヒバリは警戒心を無くし興味津々とばかりに問いかける。まるで本当に無邪気に興味を抱いているかのようだと凪はつまみを口に運びながら内心でため息をついていた。当然のことながらヒバリの正体も目的も何も知らない男はヒバリの反応に気を良くし、ニヤリと笑ってその耳元に顔を近づけた。
「味は甘いフルーツって感じだな。苦味もない。だが香りは極上。まさに絵に描かれた天国ってやつだ」
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