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第106話
「じゃ、その見た目だとお母さんの血の方が濃いのかな」
「んー、考えたことはなかったけど、そうかもね。名乗らない限り、兎都にいてもハーフだと思われたことはないから」
ヒバリの話がどこまで真実であるかは別として、確かにヒバリは兎都の血を色濃く感じさせる容姿をしている。黒い髪に、黒系統の瞳。そして何より特筆すべきは小さく華奢な身体だ。なにせ兎都の人間は世界で一番小さな種族、とまで言われているのだ。元々大柄なディーディア人と並べば大人と子供に見えてしまう。例え年齢が逆であったとしてもだ。現にヒバリの頭は目の前で話している男の胸元くらいにあり、座っている椅子も男はしっかりと床に足がついているというのにヒバリの足はプラプラと浮いている。グラスも同じ大きさだというのにヒバリが持てば随分と大きく見えるものだ。
「なに? 兎都に興味があるの?」
面白みのある国とは言い難いけど、なんて酒を飲みながら流し目で言うヒバリに、男は再びヒバリの耳元に唇を寄せた。
「兎都っていうより、俺はあんたに興味があるかな」
フッ、とわざとに吐息を吹きかけられたヒバリは、しかし嫌悪を見せることもなくクスクスと笑った。それはまるで喜んでいるかのようで、凪の胸に靄が広がる。
(気持ち悪い)
何かが込み上げてきて吐きそうだ。それを抑え込むように、凪は酒を飲んだ。
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