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第111話
夜もふけた頃、サーミフの寝支度も終えた凪は早々に休もうと部屋に向かっていた。ヒバリからは調べたいことがあると言われていたので、しばらくは凪の出番もない。久しぶりに兎都から取り寄せた本でも読もうかと心を弾ませていた時、ガチャン、とほんの微かな音が聞こえた。とても小さな音だが、そう遠くはない。何かが割れてしまったのだろうかと視線を彷徨わせる。そして小さく息をついた。
この近くにあるのはヒバリがいる部屋だ。他にも部屋は幾つかあるが、今回はサーミフの命令ですべて空けている。大胆な泥棒か、節度を忘れた者が逢引きでもしていない限り、音の発生源はヒバリの部屋となるだろう。そして何かがあったとわかっているのに何もしないのは使用人として職務怠慢。いかにヒバリと関わりたくないと願っていたとしても、相手はディーディアが丁寧にもてなすべき賓客なのである。
仕方ない、と凪は踵を返しヒバリの部屋の扉をノックした。
「凪です。先程なにか割れるような音がしましたが、ご無事でしょうか?」
大丈夫ですか? と静かに声をかける。安否確認は大事だが、相手が相手だけにあまり騒ぎ立てるのは良くない。
「どなたかいらっしゃいますか?」
シンと静まり返る室内に、凪は幾度かノックを繰り返す。もし誰もいないのに音が聞こえたというのなら、それはそれで問題だと脳裏でもしもの対策を立て始めた時、カチャリと静かに扉が開いた。
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