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第112話
「……あぁ、ナギ殿でしたか。いかがなさいましたか?」
顔を覗かせ、どうぞと中へ促してくれたのはポリーヌだった。周りの部屋は使われていないとはいえ、まったく人通りが無いわけではないと、凪も一歩室内に足を踏み入れて扉を閉める。そしてポリーヌに向き直った。
「夜分に申し訳ございません。先程何か割れるような音が聞こえたので、何かあったのかと思いまして」
ディーディアにとって大切な客人であるヒバリが破片で怪我でもしたら大事だ。何かが割れてしまったのなら早急に片付け、代わりのものを持ってこようと凪はできるだけ丁寧かつ穏便に伝えたが、ポリーヌは苦笑して首を横に振った。
「いえ、貴国からお借りしている調度品を割ってしまったわけではありませんので、こちらで対処いたします。お騒がせして申し訳ございません。お気遣い、ありがとうございます」
何でもないように言うポリーヌに違和感を抱くが、彼女が対処すると言うのであればディーディアのいち使用人たる凪がこれ以上何かを言うのは押し付けがましいというものだろう。そう思ってわかりました、と軽く頭を下げた時、ほんの少し開いていた扉から勢いよくロールが飛び出してきた。そしてポリーヌの足にじゃれついている。そっとロールを抱き上げて、ポリーヌは扉の方へ視線を向けた。同じように凪も視線を向ける。
客室はどこも同じ作りをしているため凪の頭にも見取り図は入っている。ロールが出てきた扉の向こうは寝室だ。きっとそこにヒバリもいるのだろう。
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